子供の頃に書いた「将来の自分への手紙」を母が出して来た。
押入れを整理していて見つけたらしい。
すっかり忘れていた。
いや、恥ずかしくて捨てた筈では?
書いたはいいが、気恥ずかしくなって部屋にクシャクシャに丸めて放置してあったのを、母がコッソリ取っておいてくれたのだ。
年代を感じさせる紙、鉛筆書き・・・。
「僕の今の夢はプロレスラーになる事です。
将来はプロレスラーになって世界中で試合をしたいと思います。
大人になった自分へ。その夢は実現しましたか?」と書いてあった。
ああ、そうだ。そんな事を確かに書いた。思い出した。
実現したよ。私はプロレスラーになった。デビューして16年も立ったよ。
そして世界中を転戦している。夢は叶ったよ。
頭の中で、昔の自分に語りかけた。
手紙の最後に「怪我をしたり病気にならないように気をつけて頑張って下さい」と書いてあった。
万感胸に迫るものがあった。
9年前、私はガンを患った。
もう再びリングに立てないのではないかと思った。
いや、それどころか命さえ危なかったのだから。
あの時、ガンとの闘いに負けていたら
リングに復帰できなかった。
それどころか、もうこの世にはいなかった。
もちろんこの手紙を目にする事もなかった。
母も笑って見られなかっただろう。
私はその手紙をもう一度、タイムカプセルにした。
庭に埋めた。
愛犬のポピーが不思議そうな顔をしてそれを眺めていた。
「掘っちゃダメだよ、ポピー」
ポピーはワン!と鳴いた。
わかったのかどうかは不明だが・・・。
どのぐらい先になるかわからない。
でもいつかまたこの手紙を見る日が来ると思う。
その時、自分はまだ現役のレスラーでいるだろうか。
ベテランと呼ばれるキャリアのレスラーになっているだろうか。
そして、レスラーでいる事はつまり健康でいる事である訳だから
再びタイムカプセルを開ける日までレスラーでいられるように。
そして健康であるように。
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