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明治生まれの人、約一世紀(100年)を生きてこられた人の言葉を今、伝え残したい。これから先、人生を生きていく私たちにとっての良きバイブルになり得ると感じます。

古き良き時代「明治」を伝え残したい

明治の人ご紹介 第1回 林たねさん

林たね

ありがたい もったいない 人様のため
おかげさま 親を大事に

林たねさん

明治40年2月12日生まれ 滋賀県生まれ

私の祖母は明治40年生まれでしたが、昭和56年に他界しました。
でも、今でも私の心の中にずっと生き続けていてくれます。おばあちゃんは一言でいうと神様みたいな人。
「宮沢賢治のアメニモマケズの詩」に出てくるような、そんな人でした。
「明治の人」第1回のみ、この活動のきっかけである祖母の思い出話をさせてください。
第2回目以降は現在元気な方に直接取材させていただきます。

口癖は「ありがたい」「もったいない」「人様のため」「自分を下に下に」「親を大切に」...でした。これって、今で言う「感謝」「質素」「奉仕」「謙虚」「道徳」だな...と最近つくづく思います。
また、「怒り・憎しみ・妬み・嫉妬・不平・不満」は全て、人の心のホコリだと教えてくれました。いつも感謝と笑顔の人だったと...今でも感心します。

共に暮らした17年間、私はただの一度もおばあちゃんの口から人の悪口を聞いたことがありませんでした。
怒る姿も見たことがありませんでした。今に思えばその姿こそが、人として一番すごい事のように思えます。いとも簡単にさりげなく。本人は少しも凄いなんて、思っていなかったのでしょうが...。
2歳くらいの頃、私は麻疹(はしか)になり、兄と弟にうつらないようにと、離れの隠居におばあちゃんと寝かされていました。おばあちゃんに育てられたことが、私の人生の中で一番の「宝物」です。

幼い頃から1つのふとんに寝て、朝から晩までおばあちゃんにべったりでした。早起きしては畑に出て神様へのお供物を取ってきて手を合わせ、夕方もまたお参りをしていました。毎日欠かさずです。朝は一日の無事を祈り、夕方は一日の無事を感謝する、ただそれだけでした。神様に手を合わせるときは御礼のみ、望みは言わなくて良い...とも教えられました。 また、「罪を憎んで人を憎まず」を不言実行している人でした。人のためになることだけをさせてもらえばそれだけで良い...、そんなことを一筋に行ってる人でした。馬鹿正直で心の優しい人でした。泥棒が入ったら「米を与えてあげなさい」と世に言いますが、本当にそれが出来る人だと思いました。相手がいくら悪くても、その相手が根負けするまで「ばか」で居られる人でも有りました。

明治生まれの人にはそれが、いともたやすく出来る人が多いのではないかと思うのです。今の時代とは、苦労のしかたが違うと思うのです。言葉や行動が自然だけど、そこには人としての「深み」があるように思うのです。神様のような人が日本中に埋もれている...そんな気がしてならないのです。
生活は豊かに、物も豊富になり、便利になりましたが...何か大きな忘れ物をしてきたことに気付いてる方も多いはずです。その忘れ物に気づかせ、教えて下さる人こそ、明治生まれの人かもしれません。食べる物がない時代も、何度かの戦争も、大切な家族を失った事も経験し、乗り越えて今、同じ時代を生きて下さっている人達なのです。
宗教の本や哲学的な本、人間学、精神学的な本が出版されベストセラーにもなり、けれども「そんなことは今更、仰々しく言わなくても、ぜーんぶやっていますよっ」と、一言で片付けられてしまいそうな気がします。現にそういう類の本を読んだ時、確かに人として大切なことが書いてあると思うのですが、反面、そんなことは全ておばあちゃんが教えてくれた、とも思うのです。それに机上論よりはるかに、体で教えてもらうほうがずっと身につくと思いました。今の時代、「背中を見て育つ」、その背中がないと思うのです。

数年前、琴引浜の温泉を訪れた時、近所の老人たちの中に、ものすごく腰の曲がったおばあちゃんがいらっしゃいました。お話をさせていただくと、こんなことをおっしゃってました。
「旦那も息子も戦争で亡くなり、残った子供はいるけど遠くに住んでいてなかなか帰って来てくれない。私はぞうきんが縫えるけれど、ぞうきんを縫ってほしいと言ってくれる人がいなくなった」
明治生まれの人のようでした。それを聞いたとき、心の中で思いました。
私はおばあちゃんの身内ではないけど、もし私がぞうきんを縫ってほしいと言い、使わせていただき、古くなったらまた縫ってほしいとお願いしたら、必要とされていると感じてくれるんじゃないか。そしたら今より元気になれるんじゃないか?

日野原重明さんの本にもあったように、お年寄りはもっと偉そうにするべきだし、しても良いのだと思います。貴重な存在をもっと大切にするべきだし、尊敬すべきだとも思います。
私がどうして明治の人にこだわるのかといいますと、ひとつは私が影響を受けたおばあちゃんが明治生まれだったこと、もうひとつは、あと20年も経つと世の中から明治生まれの人はほとんどいなくなるからです。
何としても残したい、残すべき人達の貴重な人生だから...、未来を生きていくための貴重なバイブルをカタチにしておきたいと強く思うのです。

周囲に明治生まれの方がいらっしゃったら、ぜひ声をかけてみて下さい。この企画に賛同いただける方がいらしたら、ぜひご協力下さい。ご連絡お待ちしております。
遠方でも日本全国どこへでも取材に行くつもりです。よろしくお願い致します。


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